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★ 東日本大震災において、「過去の津波の災害伝承が継承されている地域では津波による人的被害が少なく、災害伝承が途絶えた地域では同じ災害を繰り返した。」とも言われています。
よく、ニュースなどで、「過去に経験したことの無いような」とか「ここに40年も住んでいるがこのような災害は初めて」というのを聞きますが、人間の一生など日本の歴史、いや地球の歴史からすると、ほんの瞬きする一瞬のようなものです。ドイツの鉄血宰相ビスマルクは「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉を残しています。経験にとらわれず、過去の歴史(伝承)にもっと注意を向ける必要があるようです。ここで扱う、「災害地名」もその伝承の一つと言え、私たち日本人の祖先が残した一言と言えるかもしれません。
★ 現代は、「ダム」「堤防」「排水」「灌漑」といった人工的な手法で回避されているケースも多く、また現在の地名のあるところが、名付けられた昔の土地そのものかという疑問もあります。たとえば、東京都の自由が丘は本当の丘で、今流行の「ブランド地名」とは異なるが、現在の自由が丘全部が丘だったわけではなく、地盤は一様ではないそうだ。その逆も真也で、地名の由来が災害に関連しているとしても、その地名の地域全体に災害リスクがあるとは言えないケースも多いのである。
必ずしも地名の由来と災害の危険性がマッチするとは限りませんが、一つの参考とはなるでしょう。それと、「地名を読む」ということは、「災害地名説」「アイヌ語説」など、多角的な視点からいろいろと解釈でき、研究者によって異なることが多いようです。まぁ、ここではその中の「災害地名」という、一方面からの見方とご理解ください。そもそも、日本全国に安全なところなどないのですから。でも、先の東日本大震災のように、いつ起きるかもしれない災害に対する心構えとしては有用かもしれないですね。危機感をもつのもどうかとは思いますが。ただ、忘れかけられた地名伝承は大事だと思います。
★ また、一つの漢字が一つの意味しか持たないというわけではありません。例えば、「丹野」「丹羽」のように、「丹」の字の付く名字は、「不老長寿の薬の丹」に由来するものが多いと言われますが、「丹波」「丹後」は地名由来の名字で「薬の丹」とは関係ありません。また、魏志倭人伝には「倭は丹を出す」とある。「丹」とは水銀赤(ベンガラ色?)で、この時代の日本の重要な輸出品だったそうです。国内には沢山の「丹(にゅう)」の鉱山があったといい、これらに由来する地名も多いようです。
したがって、下記の地名が全て危険地名ということも無いので注意しましょう。どうしても、「災害地名」「アイヌ語地名」「外来地名」などの説にこだわりやすい傾向もなきにしもあらずなので、その辺は注意が必要です。
★ なお、新しくつけられた地名(現代地名)は参考になりません。古い地名が大事。古い地名を読み解くには「古語」も大事ですよ。
★ また、「地名と災害」に関しては政府も注意を喚起しています。「地名があらわす災害の歴史 政府広報・内閣府」
★ 日本の地名のほとんどは災害に関連する。【地名でわかる水害大国日本 楠原佑介 祥伝社新書】
★ 荒れ地の地名
・ 昔は、(災害に)安全なところに住んで、危険なところには災害地名をつけた。例えば「崖」だが、後世の人達はそれを「柿」や「鍵」「影」などと置き換えた。【出典】
※ そして、土木技術が進んだ近代においては、そういう災害地名にも住むことが出来るようになり、古来の地名を捨てて、「〜台」とか「〜丘」のように売りやすいイメージ地名に置き換えた。
★ 災害地名への警鐘
・ 今尾恵介さんは、著書の「地名の楽しみ」の中で、『「この漢字が使われた地名は危ない地盤だ」とか、「かつて津波に遭ったことを示す地名だ」といった我田引水的な見解を安易にメディアに流出させる傾向も目立つのは気がかりだ。これは、本文にも書いたことだが、地名の文字だけを切り取って、「土地の安全性」に結びつける風潮は実に危ういものがあり、くれぐれも騙されてはいけないと思っている。』と書いていることにも留意しなければならない。
・ ただ、「地名の楽しみ」の中で、「地名の音や漢字をあげて地形を説明している」ところが多く見られる。地形は「災害リスク」にも間接的に関係することも事実でしょう。
例) 『崖: 昔は「ハケ」や「ママ」「ハバ」と呼んだ。
・ 羽ケ下(東京都羽村市)、八ヶ下(東京都日野市)、羽毛上・下(東京都調布市)。熊本市の八景水谷(はけのみや)。峡田(はけた)。
・ 間々(愛知県小牧市)、万々(高知市)、真間(千葉県市川市)、間々田(栃木県小山市・この場合の田は処の意味)。
・ 羽場。幅下(名古屋市)。矢巾(岩手県)。』【地名の楽しみ 今尾恵介 筑摩eブックス】
★ 災害地名はすべて否定すべき事柄か?
・ たとえば、兵庫県に百千家満(おちやま)という難読地名があるが、「角川日本地名大辞典」によると、『地名は、古くから風水害による山崩れや落石などの天災に見舞われたことに由来する。「天保郷帳」では「古者落山村」と肩書するが、村の繁栄を願って漢字をあてはめたものと思われる。』とあり、災害由来の地名があることも確かなようだ。しかし、災害地名を読む場合には以下のような注意が必要なのである。
# 災害地名を読む上での注意
� 礎咫А 礎咾箸いγ鰐勝�そういったところに住む場合、普通は池の中にすむことはありえず、一般には池の周辺の微高地に住むから災害リスクは少ない。しかし、時代が下るにつれて池を埋め立てて、耕地や住宅地にすることもある。この場合、〜池の地名に池はない。したがって、地名と地形が異なる場合には、かえって注意が必要ともいえる。谷も埋め立てて造成することがあるが、この場合にも〜谷の地名には谷が無い場合がある。
�◆|鰐召論個垢垢襦�
・ 昔、狭い地域に「〜沢」と地名をつけた。時代が下るにつれて、その地名が小字名、大字名、市名、県名と生長する。だからといって、その県全体が危険なわけでもない。
・ たとえば、災害地名ではないが、埼玉県の埼玉は、昔は現在の行田市の狭い地域を表していた地名だが、それが後に郡名となり、県名となったわけで。埼玉県という表記に、かつての狭い地域の意味合いが表れているわけではない。
�� たとえば、沢(沢地名)は、大雨が降れば濁流となって水かさが増す。だから危ない、ではなく、どこまで水かさが増すことを、想定してそれより高いところにテントを張ろう、という知恵が大事である。
★ 地名は災害の履歴書【この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う 楠原佑介 幻冬舎新書】
★ 地名説による解釈の違い例
| 【稲毛】(いなげ):
千葉県千葉市稲毛区 # 黒砂に小字「いなぎだえ」があり、古代の稲置の所在との関係があると言われる。 # 「いな(砂)」+「げ(接尾語)」か。【出典】(読みから) # 千葉県。稲毛の「毛」は、穀物のことで、「稲」と同義語。つまり「稲+稲」の重複地名。稲作地帯であることを示すか?【出典】(文字から) |
★ 漢字の意味
■ 深草少将(ふかくさのしょうしょう)と言えば、小野小町の処に九十九夜通った後に雪に埋まり凍死したことで有名だが、問題は「深草」という表現。以下のように湿地帯であまり地盤も良く無さそうだ。
【深】: 深田、泥田を意味する。
【草】: フサ・フシ・フセと同様に水辺の底湿地を意味する。
# クサ・クソ: 「くさ(腐)」る、に由来し、土壌が腐ったような湿地を表す。岐阜県恵那市岩村町富田九佐(くさ)。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
# 深草の地名例: 京都府京都市伏見区深草。宮城県加美郡加美町上野目深草。福島県福島市松川町浅川深草。福井県越前市深草。愛知県名古屋市中村区岩塚町深草。滋賀県愛知郡愛荘町深草。兵庫県淡路市深草。宮崎県小林市北西方深草。【「深草」の地名の由来】
| 日本書紀の「欽明天皇即位」の記載の次に「山背国紀郡深草里の人として秦大津父(はたのおおつち)」が登場する。秦大津父は馬に乗って伊勢に旅し交易をする富豪として描かれている。かれは欽明天皇の寵愛をうけて大蔵省(おおくらのつかさ)の官人になったと言われる。この深草の地域は弥生時代中期には農業が行われていたことが知られており、渡来人が宇治市から深草への移り住んだという。また深草には屯倉(みやけ)が設けられていたという。 かりに、深草の地が湿地帯であるならば、このように有名人が住んで栄えたり屯倉が設置することもないのではないだろうか?そういった意味では「深草」が全て低湿地ではないのかもしれません。 |
■ 葛飾区柴又(しばまた)は「フーテンの寅」さんでも有名ですが、かつては「嶋俣(しままた)」と呼ばれたそうです。「嶋」はデルタ状の土地、「俣」は河川の合流地点を意味します。昔は一帯が海辺で、島のような土地が点在していました。江戸時代以降に「柴又」となったといいます。こういう地名も洪水の危険地域として注意が必要でしょう。
【嶋】: デルタ状の土地
【俣】: 河川の合流地点を意味する。他には秀吉の一夜城で有名な、岐阜県大垣市の「墨俣城」があります。そもそも、この「大垣」という地名もそれなりの由来があります。【山形市江俣】
■ 相生(あいおい): 「アイ」は「アエ」の転訛で「切り立った崖」や「旧河川」や「湿地・低地」を意味する。【「相生」の語源】
・ 兵庫県相生市相生【あぶない地名 災害地名ハンドブック 小川豊 三一書房】
■ アオ: 「あお」は「あぼ」が転じたもので、崩壊地を意味する。岐阜県高山市奥飛騨温泉郷安房峠。岐阜県中津川市駒場青木、岐阜県多治見市青木町、愛知県高浜市青木。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「アオ」の語源】
■ アカ: 「アカ」は古語で水の意味がある。地盤の弱い水気の多い場所。水流による堆積物が(垢)のようにたまった様子。「あけ」も「あか」と同じ。「あゆ」「ひる」は軟弱な土地。【「アカ」の語源】
・ 古語で「アカ」とは水を意味する。地形的には、湿地を意味することが多い。
・ 茨城県守谷市赤法花(あかぼっけ): 水気の多い、崩れやすい土地を意味する。【あぶない地名 災害地名ハンドブック 小川豊 三一書房】
・ 赤法花(あかぼっけ): 茨城県守谷市赤法花。地名は平将門が森屋(守屋)に築いた城郭から当地を眺望したところ赤壁に似ていたことにちなむと伝承される。【出典】
■ アク、アクツ、アクタ、アクト: アクトは、アクタの転訛とされ、川沿いの低湿地の水はけの悪い土地をいう。阿久戸、悪戸、阿久津、圷、芥、安久田、阿久登、飽戸、明智。【「あく」の語源】
■ アクミ: 海が沸き立つ。例)出羽国飽海郡(あくみぐん)。【「あくみ」の語源】
■ アザブ: 麻布、麻生、浅布など。アザブは、崖地を意味する。【「あざぶ」の語源】
■ アズ: 「小豆」。土砂崩れ。【「アズ」の資料集】
「アソ・アズ・アト」: 浅い谷や崩れやすい崖地を表す。岐阜県飛騨市神岡町麻生野(あそや)、岐阜県大野郡白川村小豆谷、岐阜県下呂市萩原町跡津、岐阜県恵那市明智町阿妻、岐阜県関市武芸川町跡部、岐阜県大垣市上石津町時山阿蘇。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ 小豆(あずき): 【「小豆」の地名】【「アズ」の資料集】
■ アツミ・アタミ: 溶岩流や温泉で海水が高温になった状態。【「あたみ・あつみ」の語源】
■ アハ: 「アハ」といえば、茂木健一郎さんの「アハ体験」を思い浮かべますが、地名の世界では、「アハ」とは「隆起に由来する地名」と言われています。例えば「安房」「阿波」「粟島(新潟県)」などがそうか?粟島は1964年の新潟地震で1m以上隆起した。房総半島(安房国)の野島崎も地震で島が陸続きになったらしい。阿波は良く分からないなぁ。【「アハ」の資料集】
■ アベ: 「湿地帯」を意味する。「あべ」は元々「危辺(あべ)」で「崩れたり、湿地」などをしめし、後に「安辺」に変化した。 → 「あべ」の地名。【「アベ」の資料集】
・ 「アベ」は「アバける」ということで、崩落性の傾斜地を意味ずる。また、低湿地を意味する。岡山県の阿部山(浅口市鴨方町)。【あぶない地名 災害地名ハンドブック 小川豊 三一書房】
※ ただ、以下のような例もある。
・ 阿部山(あべさん): 岡山県浅口市鴨方町小坂東字阿部山。山頂付近には平安中期の陰陽家安倍晴明が天体観測をしたと伝えられる晴明屋敷跡があり、山名もこれによるといわれる。北斜面は急傾斜であるが山頂部から南斜面にかけては平坦面が広がり、花卉園芸や酪農が行われている。【出典】
■ アユ: 古語で「アユ」とは「揺れる」という意味。土のしまりが悪く揺れるところ。山梨県南アルプス市鮎沢。【あぶない地名 災害地名ハンドブック 小川豊 三一書房】【「あゆ」の語源】
■ アラシ・オロシ: 「あら(荒)」す、「おろ(降)」す、から転じたもので、荒れた崩壊性の斜面を示す。岐阜県郡上市八幡町入間嵐、岐阜県恵那市明智町横通下嵐(おろし)、岐阜県土岐市下石(おろし)町。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「あらし」の語源】
■ イカ・イラ: 「いか(厳)」つい、「いら(苛)」立つに通じる。厳しく険しい地形を意味する。岐阜県恵那市長島町久須見碇(いかり)、岐阜県笠置町姫栗猪狩(いかり)、岐阜県多治見市廿原猪狩、岐阜県美濃市安毛烏賊(いか)。愛知県田原市伊良湖町。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「いか」の語源】
■ 五十嵐(いがらし): 新潟県三条市に五十嵐川がある。この「いがらし(いからし)」は「五十嵐」の名字の由来となった地名だが、「イカラシ」=「イカリ」で、溢れるという意味を持つ。
五十嵐、五十里、碇、猪狩などで、川が怒る。氾濫する。アイヌ語でイカルは氾濫を意味する。【「イガラシ」の語源】
■ イソ: 岩のゴロゴロしている所。【「いそ」の語源】
■ イタ: 「いた(傷)」んだような荒れ地を意味する。岐阜県中津川市瀬戸板橋、岐阜県高山市丹生川町板殿、岐阜県本巣市根尾板所。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「いた」の語源】
■ 板谷(いたや): 「イタ」は傷、「ヤ」は谷地形を意味する。【「イタ」の資料集】
■ イチ: 「いつ(厳)」が転じたもので、「いか」と同じ。岐阜県恵那市笠置町姫栗市木、岐阜県揖斐郡揖斐川町春日美束市瀬、岐阜県大垣市上石津町一之瀬。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「いち」の語源】
■ イデ: 「出田(いでた)」。水の湧き出る所など。【「いで」の語源】
■ イナバ: 「い(井)」+「な(土地)」+「ベ(辺)」から転じたもので、「水辺」を指すとも言われる。また「砂地」という解釈もあるようだ。岐阜県飛騨市古川町稲葉、岐阜県恵那市明智町野原稲場。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「いなば」の語源】
■ 芋(いも): 「いも」=「うも(うめ)」で埋まるの意味。その他に、「伊毛」「妹」「神」「今生」など。【「いも」の地名】【「いも」の語源】】
・ 新潟県の中越地震で大きな被害をうけた、新潟県の旧山古志村の「芋(いも)川」も、「埋もれる川」そのものとしている。なお「芋川」の支流に「土留川(現在は神沢川)」があり、これもなにやらきな臭い名前だ。【この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う】
■ 牛(うし): 古語の「憂し」。不安定な土地。「うさ」宇佐、宇佐美なども同じ。【「牛」の地名】【「ウシ」の資料集】
■ ウタ: 宇多田の宇多(ウタ)は「ムタ」から転じたもの、「湿地」を意味する。【「うた」の語源】
■ ウバ・オバ: 急斜面や崖地を表す。岐阜県関市武芸川町宇多院乳母之懐(うばのふところ)、岐阜県飛騨市宮川町小豆沢姥ヶ袋、岐阜県加茂郡八百津町八百津姥ヶ袋、岐阜県本巣市法林寺姥ヶ洞、岐阜県揖斐郡大野町牛洞姥ノ袋。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「うば、おば」の語源】
■ 梅(うめ): 「梅」。埋められた場所。 → 「梅」の地名 ・ 【「うめ」の語源】
# ウミ・ウメ: 「うみ(熟)」が訛って「うみ(海)」や「うめ(梅)」になったものもある。岐阜県恵那市上矢作町海、岐阜県中津川市瀬戸梅平。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ 浦・裏(うら): ウラは水辺を意味する。川や入り江。「ウラ」は水辺を表し、川や入り江や海岸によくみられる地名。津波被災地に多い地名の一つと言われる。【「うら」の語源】
■ 江(え): 「エ(江)」は「大地を彫り込んだ地形」。【「え」の語源】
■ エグ: 「抉れた地形」を意味し、「えげ」や「えぎ」に通じる。岐阜県高山市江黒、岐阜県中津川市恵下(えげ)、岐阜県羽島市江吉良(えぎら)町、岐阜県本巣市会下、岐阜県不破郡垂井町宮代会下(えんげ)、愛知県武豊町会下。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「えぐ」の由来】
※ 検索すると、全国に結構「会下」の地名がみられるようだ。
※ 「会下」の元々の意味: 禅宗・浄土宗などで、師の僧のもとで修行する所。また、そのための集まり。
■ エド: 「よど(淀)」が訛ったもので、淀んだ泥質の土地を示す。岐阜県揖斐郡池田町八幡江渡前。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「えど」の語源】
・ 江渡(えど): 荏戸・恵土・江戸とも書いた。
■ 海老(えび): 川などが曲がりくねった状態を表す。川が曲がりくねっていると氾濫しやすい。【「海老」の地名】【「えび」の語源】
■ 落合(おちあい): 「落合」は川の合流部を意味する。道路も合流した先は渋滞がおきやすいが、川も合流によって水量が増えると氾濫しやすい。【「落合」の地名】【「おちあい」の語源】
■ オトメ: 「うと」+「ベ(辺)」が訛ったもので、凹んだ地名を意味する。岐阜県加茂郡白川町和泉乙女坂。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「おとめ」の語源】
■ 折立(おりたて): 「降・落・おり」「断(たて)」?【「おりたて」の語源】
■ カイ: 「狭」。狭い谷。【「かい」の語源】
■ カガ: 草の生えた砂浜。【「かが」の語源】
■ 柿(かき): 柿のつく地名は、「欠く」と同じで、土地が欠けやすい。つまり川の流れなどで周辺の土地が流される状態を意味する。【「柿」の地名】【「カキ」の資料集】
# カケ・カキ: 「か(欠)」けやすい崖のような崩壊地を表す。岐阜県中津川市落合月柿(つきがき)、岐阜県可児市柿田、岐阜県山県市佐野網掛、岐阜県揖斐郡揖斐川町柿ヶ谷。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ 欠(かけ): 地すべりや土砂崩れがあった場所に多い。【「かけ」の地名】【「カケ」の資料集】
■ カシ: 柏(かしわ)・樫(かし)などは「傾いだ地形」を意味する。【「かし」の語源】
■ 梶金(かじかね): 「かじ」「かね」とも、地滑りを意味する古語。う〜ん、これは初耳だ。
■ 金(かな): 例えば金谷の「かな」は、急傾斜地で、礫の堆積地といわれる。【「かな」の語源】
■ 釜(かま): 津波でえぐられた地形と言われる。【「かま」の語源】
・ カマ: 「釜」「鎌」。湾曲型入江地形や扇状地。津波被災地に多い地名の一つと言われる。
・ カマ・カミ: 「か(咬)む」に由来し、抉られた窪地や谷間を表す。岐阜県美濃市須原釜土、岐阜県加茂郡東白川村神土(かんど)、岐阜県下呂市萩原町羽根釜屋、岐阜県瑞穂市釜戸町。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ カメ: 「か(咬)む」が転じた。岐阜県中津川市銭亀(ぜにがめ)、岐阜県恵那市長島町久須見銭神。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「かめ」の語源】
・ 亀(かめ): 「カメ」の資料集
■ 鴨(カモ): 「カマ」から転じて、えぐり取られた地形や低湿地の浸水地名。【「かも」の語源】
■ 木曽(きそ): 「き」は「切れ目」、「そ」は「険阻な場所」を表す。岐阜県加茂郡東白川村木曽渡(きそと)、岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲木曽屋、岐阜県高山市丹生川町小木曽。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「きそ」の語源】
■ 喰い(くい)=「クレ」という浸食を意味する。
・ 宮城県多賀城市の螻喰(けらくい): 沢山のオケラがいて土地を浸食したのに由来する。
・ 宮城県名取市の蟹喰(かにくい): 蟹が土地を浸食することに由来する。
・ クエ・クレ: 崩れる場所をあらわす。「古語でクレとは?」「崩山(くえやま): 長崎県島原市崩山町」【「クエ(クイ)」の資料集】
■ クズ・クジ・グジョ: 「くず(崩)」れる、「くじ(挫)」ける、に由来し、崩れやすい地形を意味する。岐阜県高山市上宝町葛山、岐阜県下呂市萩原町久津、岐阜県土岐市久尻(くじり)。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「クズ・クジ・グジョ」の語源】
■ クテ: 湿地を意味する。中部地方に多い。久手、長久手。長久手は小牧・長久手の合戦で有名か?【「クテ」の語源】
■ 久保田(くぼた): 「窪田」→「久保田(佳字)」
■ クマ: 「熊」「隈」。曲がりくねった状態。【「クマ」の語源】
■ 倉・蔵(くら): 「クラ」のつく地名は崖、谷などに多い地名。「くら」は「崩れる」という意味。【「くら(倉・蔵)」の地名】 ・ 【「クラ」の地名の意味】 ・ 「古語でクラとは?」
| # 銅山川(鳥川): 山形県大蔵村地蔵倉、小松倉、板屋倉、日陰倉といった断崖絶壁が連なる。大蔵村は土砂崩れがおきやすい地区の一つ。【参考資料: 山形県】 ・ ただし、「大蔵村」の由来はちょと違う。 # 180806: 前線の南下により、山形県北部で大雨。山形県最上郡戸沢村の蔵岡地区が冠水して孤立。この地は最上川沿いの低地で、最上川の水位が上がると、支流の角間沢川が溢れるそうだ。過去にも冠水したことから2018年1月に排水ポンプが整備されたが、今回は停電で作動しなかった。【2018/08/07:河北新報】 |
・ クラ・クレ: 捲れて落ちそうな急斜面や断崖絶壁を表す。岐阜県飛騨市古川町信包(のぶか)乳久礼、岐阜県飛騨市古川町笹ヶ岡倉狩、岐阜県下呂市御厩野鞍掛。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ 栗(くり): クリはクレ・クル(崩れる、えぐられる)。【「栗」の地名】 ・ 「栗原郡」の地名の由来 ・ 【「クリ」の語源】
※ ただし、「栗」は、呉越族の呉から転化したものや、植物の栗由来もあるのですべてがこの様な意味を持つ地名とは言えないようです。
・ ただし、神奈川県の久里浜はかつては栗浜とかかれたものの、崩壊地形と言えるかは、ちょっと微妙 → 久里浜(くりはま)
■ クルミ、クルメ: 蛇行した川にくるまれた所。「米」と同じようなものか?「久留米」など。【「クルミ」の資料集】
■ 呉(くれ): 低湿地を意味する。広島県呉市。【「クレ」の資料集】
■ クロ: 何かの「くろ(畔)」や崖地の「くら」から転じたもの。
■ 桑(クワ): 崩壊しやすい河岸や、その堆積地を表す。【「クワ」の語源】
■ 黄金(こがね): 砂浜を表す地名。【「コガネ」の語源】
■ 苔(こけ): 苔地名は「こける(転倒する)」「かける(欠ける)」に由来する。【この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う 楠原佑介 幻冬舎新書】【「コケ」の語源】
■ 桜(さくら): 「さくら」の「サ」は接頭語で、クラはクレやクエの転訛。また「サクラ」の「ラ」は接尾語で、「サク」は裂けるに由来するという説もある。「桜島」なんかは代表的か?【「さくら」の語源】
■ サコ: 「迫」。狭いところ。【「サコ」の語源】
■ 猿(さる): サルは古代語のザレ(礫)の転語で、山崩れで、岩が崩れる所。【「猿」の地名】【「サル、サレ」の語源】
| # 猿渡(さるわたり): 熊本県上益城郡 ・ 「さる」は「され・ざれ(崖)」から転じた。崖を渡るという意味。 ・ 「サル」にはアイヌ語で「葦原の低湿地」という意味もある。例)北海道猿別 |
・ サレ・サル: 「猿」。地すべり。露出して「さら(晒)」されている地名を表す。岐阜県中津川市高山猿飛。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「サル、サレ」の語源】
■ シオ: 山手にある場合は「しぼんだ地形」を表し、沿岸部では入り江を表す。津波被災地に多い地名の一つと言われる。【「シオ」の語源】
# シオ: 「しお(萎)」れたり、「しぼ(萎)」んだ地形を表す。岐阜県可児市塩、岐阜県中津川市神坂塩野。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ 蛇(じゃ): 土砂の流出や堆積をあらわす。水の流れや土石流が流れる様子を、蛇がのたうち回る様子にたとえたものです。「蛇崩(じゃくずれ)」「蛇喰(じゃばみ)」「蛇抜(じゃぬけ)」「蛇落」 → 【「蛇」の地名】【「ジャ」の語源】
■ 菖蒲(ショウブ): 細い水路や沢、田、沼などを意味する。【「ショウブ」の語源】
■ 白(しろ): シロは、まっさらになるという意味。洪水による土砂で埋まった土地。「白掛」なんか、特に注意なのか?【「白(シロ)」の語源】
■ ス・スカ: 「洲」。砂浜の島や砂地をあらわす。【「ス・スカ」の語源】
■ スカ・スナ: 「スナ」は砂地だった地や砂が打ち寄せる土地を意味する。「スカ」は「サス」ともいい、「州処」や「州」と書かれ、川の流れの中にできる中州や海岸にみられる砂丘などを意味する。水流により浸食された地形。津波被災地に多い地名の一つと言われる。
■ 曽根(そね): 川の水が運んできた堆積物を「そね」と呼ぶ。大曽根、中曽根、貝曽根、ギャル曽根(笑)。また、突出した所、例えば岬の意味がある。城下・市場などの端を表わす。【「曽根」の地名】 ・ 「古語でソネとは?」 ・ 【「ソネ」の語源】
■ タキ・タケ: 「滝」。川の分岐点や、流れが落下する所(滝)をあらわす。【「タキ・タケ」の語源】
■ 竹(たけ): 崖状の地形を意味する。
■ タマ: 「たふ(倒)」に由来する「たば」が訛ったもので、崖などの崩壊地を意味する。岐阜県関ヶ原町玉、岐阜県中津川市玉蔵(ぎょくぞう・以前は「たまくら」と呼んだ)。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「タマ」の語源】
■ 津(つ)【「ツ」の語源】
・ 一般的には港を指すといわれるが、、、。内陸部の海岸や河川の無いところにも「ツ」の地名がみられる。
・ 「ツ(津)」とは「連なる」という意味がある。例)興味津々。津々浦々?
・ つまり、「波が連なる = 津波」ってことか。
■ ツキ・トキ: 「つき」は「つく」から転じたもので、高くそびえ立つ地形を表す。岐阜県瑞浪市高月町、岐阜県飛騨市河合町月ヶ瀬、岐阜県大垣市上石津町時坂。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「トキ・ツキ」の語源】
■ 椿・燕: ツバケル=崩れる。【「椿」の地名】【「ツバキ・ツバメ」の語源】
■ 鶴(ツル): ツルとは、川の流れが大きく蛇行する場所。 「つるみ」は農業用水路を意味する。【「鶴」の地名】【「ツル」の語源】
■ トチ: 「たち」から転じたもので、高い急斜面や崖地を表す。岐阜県加茂郡川辺町西栃井。岐阜県高山市奥飛騨温泉郷栃尾。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「トチ」の語源】
■ トリ: トリは土地がとられる。【「トリ」の語源】
■ ナギ: 「なぎ」は薙刀でばっさり切り落としたような断崖絶壁を表す。岐阜県高山市久々野町渚(なぎさ)、岐阜県中津川市苗木那木(なぎ)。【地名由来
飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】【「ナギ」の語源】
■ 梨(ナシ): 古語の「ナシル」から転訛。山間部の緩傾斜地に多い地名。地下水位が高く、地すべりをおこしやすい。【「ナシ」の語源】
■ ナル: 「成」「鳴」。傾斜地。また、平地をも意味する。【「ナル」の語源】
・ 鳴(なる): 「ゆるやかな」という意味もある。岐阜県可児市今渡鳴子。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
・ また、「鳴(成)」は川の流れる音を意味することもある。山形県山形市成沢。
■ 新田(にった): 【「新田」の地名】【「ニッタ」の語源】
・ 新田は「ニタ」で料理の「ヌタ」と同じ意味で「じとじとしている湿地や沢」を指す。 アイヌ語の「ニタッ」も同じ。
・ ちなみに東北線新田駅があるのは宮城県登米市迫町新田(にった)狼ノ欠(おいのがけ)。ところで、【狼のつく地名】、東北地方に結構見られます。
・ 同じ新田でも、「しんでん」読みの地名が多く見られる。これらの新田は江戸時代の開発地で、水田だけではなく畑も含むので、すべて低湿地とは限らないという。
■ 貫(ぬく): 鉄砲水などで、崩れたところ。山崩れや土砂崩れ。「大貫」【「貫」の地名】【「ヌキ、ヌク、ヌケ」の資料集】
■ 鼠(ねずみ): 「大雨が降ると寝ずの番」などに由来する。佳字が多いので、漢字の持つ意味だけでなく、読みも大事。【「鼠」の地名】【「ネズ、ネズミ」の資料集】
■ ノゲ: 「ノゲ」は崖のこと。例)野毛。【「ノゲ」の資料集】
■ 除(のぞく): 「洪水などの時に、税を免除された」「土地がのぞかれた」などに由来する。【「ノゾキ」の資料集】
※ 山形県の「及位(のぞき)」もこれに関係するか?
■ ハガ: 「はが(芳賀、羽賀、羽下)」とは、崖を表す古代語の「はが」に由来する。【日本の名字 武光誠 角川新書】より
・ 芳賀(はが): 栃木県芳賀郡。「芳賀」は美称で、「良い土地」という意味。しかし、もとは「はけ、がけ」で湿地や荒れ地を意味する。【出典】
【「はが」の語源】
■ 萩(ハギ): 「ホキ」の転訛による「ハキ」に由来する。「ホキ」は、山間部では崩れやすい崖地、土地が剥がれる。地すべりなどを意味する。河川の屈曲部で水流が当たる場所を意味する。【「萩」の地名】【「はぎ」の語源】
・ なお、山口県萩市のように「椿(つばき)」の「つ」がとれて「萩(はぎ)」になったという説も見られるようです。 → 詳細
■ ハゲ: 「ハゲ」は岩崩れのこと。【「ハゲ」の資料集】
■ ハチ・ハツ: 「はち」は「はつ(削)」から転じたもので、浸食された急斜面を表す。岐阜県中津川市阿木八屋砥(はちやど)、岐阜県美濃加茂市蜂屋町。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ ハネ: 「羽」。土地がはねる。つまり、地すべりや洪水で流される地形か?【「ハネ」の資料集】
■ ハマ: 浜。津波被災地に多い地名の一つと言われる。
■ ハヤ: 急傾斜地。
■ 美女(びじょ): ぬかるみをいう。埼玉県戸田市美女木。山形県東置賜郡川西町上小松美女木。【「ビジョ」の資料集】
■ ヒメ: 「しめ(湿)」が転じたもので、ジメジメした湿地を意味する。岐阜県恵那市山岡町上手向姫口。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ 平(ひら): 急傾斜地や崖地。アイヌ語ではピラ。ヒラサカは、坂道や滑りやすい土地。【「ヒラ、ピラ」の資料集】
・ 長野県では「平(たいら)」は「盆地」を意味する。(例:善光寺平、佐久平)
■ 吹(ふく): 火山が噴火することを「フク」という。これに由来する名前に「雲仙普賢岳」があり、「フク」から「フケル」になり、「フケヌ」→「フケン」となったと言われる。【「フク」の資料集】
■ 浮気(ふけ): 湿地、崖、深いという意味。滋賀県守山市浮気町。【「フケ・ムタ」の資料集】
■ フダ: 「フダ」は棚田や湿地となった場所。
・ ボウ: 「ほう(崩)」に由来する。岐阜県恵那市大井町日光坊。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ ホキ・ホケ・ハカ: 「大歩危」。川岸の崩壊(崖)をあらわす。【「ホキ・ホケ」の資料集】
・ ホキ: 「ほう(崩)」+「け(処)」に由来し、崖地を表す。
・ 保木間(ほきま): 低湿地を干拓する際に、木の柵を作って土が流れないようにした。これに由来する。 → 東京都足立区保木間
■ ママ: 「間々(まま)」は、土の崩れる崖をあらわす。【「ママ」の資料集】
■ マメ: 「マメ」は崖をあらわす「ママ」の転訛。
■ ミツケ: 新潟県見附市
■ 緑(みどり): 緑のつく地名も、過去に液状化がみられたケースが多く、わかっているだけで全国で12個所。その代表例が東京都墨田区緑町。1894年の東京湾北部地震、1923年の関東大震災で液状化が確認されているそうです。【地名は災害を警告する 由来を知りわが身を守る 遠藤宏之 技術評論社】
■ 三宅(みやけ): 「ミ(御)」+「ヤケ(焼け」)に由来する災害地名。【この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う 楠原佑介 幻冬舎新書】
■ ムタ: 湿地を意味する。九州に多い。牟田、宇多、奴田など。「古語でムタとは?」【「ムタ」の資料集】
■ メ: 「メ」→「女」「目」
凹むこと。凹んだ部分、地域。
小名浜、女川 = 凹んで湾となった地名。
雄(男)波の上の「オナ」をとった。
雌(女)波 → 小さな波
・ 秋田県男鹿市船川に女川集落がある。
・ 福島県南相馬市小高区女場(おんなば)
■ 持・餅(もち): 小盆地の傾斜地。例)岐阜県高山市上宝町鼠餅。【「モチ」の資料集】
■ ヤ、ヤチ: 「谷地」。低湿地。【「谷(ヤ・ヤツ・ヤト)」の資料集】
■ 柳(やなぎ): 「やな」は斜面。「なぎ」はなぎ倒す。
■ ユザ: ゆさぶられる。例)出羽国遊佐郡(山形県飽海郡遊佐町)
■ ユリ: 秋田県由利郡(由理郷)は揺れる地。火山の鳴動や、地震の揺れ動きを意味する。【「ユラ、ユリ」の資料集】
・ 岩手県宮古地方の方言で「津波」を意味する。岩手県宮古市の重茂半島に「与奈(よな)」という地名がある。 宮城県岩沼市押分与奈?
・ 福島県の相馬地方では「ヨダ」と言ったもよう。
・ 三重県度会郡では「潮が急に満ちたり引いたりすること」
・ 静岡県榛原郡では風や潮流による水面のうねり
・ 伊豆大島では岸近くに浮かぶ泡の集まり。
■ 米(よね、よな): 「ヨネ」「ヨナ」は大水や洪水などにより、川が押し流す土砂を示す。【「米」の地名】【「ヨナ」の資料集】
※ 仙台市の「米ヶ袋」なんて地名は「米」も「袋」も危ない地名ですねぇ。
# 「こめ・こま」: 封じ込められた地形を表す。岐阜県中津川市馬籠、神奈川県相模原市馬込、岐阜県岐阜市秋沢駒場、岐阜県下呂市萩原町開米(かいごめ)。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
# 宮古島では「海」を「ヨナ」という。【自然災害と民俗 野本寛一 森話社】
# 阿蘇山周辺では噴火降灰のことを「ヨナ」という。 → 【詳細】
■ 八木(やぎ): 転石地名。山間の狭い谷あいを意味する。【「ヤキ、ヤギ」の資料集】
■ 龍: 龍は古くから水神として祀られた。龍の曲がりくねった様は川の蛇行を表し、氾濫しやすい。【「リュウ・リョウ」の資料集】
■ ワゴウ: 「わ(輪)」+「ご(河)」が転じたもので、川が曲がりくねったり合流したりする場所を意味する。岐阜県恵那市明智町和合。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ ワセダ: 「はせ(狭)」+「と(処)」から転じ、山合いの狭い谷間を表す。岐阜県飛騨市古川町杉崎早稲田、愛知県長久手市早稲田。【地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版】
■ ワタリ: 「渡」「亘理」。大波。
★ 佳字に注意
【佳字】(けいじ): 漢字の字面が良くない場合に、同じ読みで字面の良い漢字をあてること。「嘉字」とも書く。
・ つまり、漢字の表記をみただけでは、本来の意味がわからないので、遡って考えなければならないということである。代表的な例としては以下のような物がある。
# 「窪田→久保田」: 「窪」は「凹」んだ土地という意味だから、
# 「葦→吉」: 代表的なのは東京上野の吉原。つまり、本来は「葦原」で、葦(アシ・ヨシ)が生えるような地勢の場所であったことをあらわす。ちなみに「葦」の生育地は「湿地帯」である。
※ ちなみに「葦」は関東では「アシ」が、関西では「ヨシ」が一般的。
★ 主な災害崩壊地名
・ 崩壊地形にちなんだ地名。
★ 災害にまつわる地名伝説等のあるところ
# 末の松山(宮城県多賀城市): 「契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 波越さじとは」(清原元輔) → 「末の松山を波が越すということはありえないように、二人の間の恋は永遠で心変わりしない。」
★ 災害対策: 現実問題としては、地名により災害リスクを調べる前に、地元の都道府県や市町村で出されているハザードマップなどで浸水や土砂崩れなどのリスクを確認することが大事でしょう。
また、地名も大事ですが地図も大事です。たとえば先の東日本大震災の時の津波も旧街道や古い集落までは届いていない地域が多いとも聞きます。また、先人は災害などがあれば次に住むところは災害の少ないところを選びました。その繰り返しで、集落や街道は自然に災害の少ない所となりました。(もちろん、全部がそうじゃないですよ)
その代表例が東海道の富士川付近の付け替え工事です。東海道の吉原宿は昔は今の東海道線の吉原駅のあたりにありましたが、1680年の大津波で壊滅的な被害をうけてその後山沿いに移転したそうです。同時に被害をうけた東海道も1682年に山沿いにつけかえられました。
※ 昔は2年で道路を移設することもできたが、今では東日本大震災から3年以上経とうというのに、道路、鉄道、住宅の移設が決まらない所も多いようです。昔は2年でできたことが、なぜに今はできないか。もちろん、これは技術力の問題ではない。民主主義になると、物事が決まるのに時間がかかり、コストもアップする。そんな気がする。
それよりも、かつて災害で壊滅した旧吉原宿のあたりに東海道線を引いて駅を作る。そして駅の周辺には新しい集落が形成され新たに災害リスクに見舞われる。なんとなく釈然としませんが、世の中、災害だけを軸に廻っているわけではないのでしょうから、致し方ないのでしょうね。
ある災害地名学者が、日本のように災害が起きない国のインフラを日本にそのまま持ち込むことに対して書いていました。その代表として東京の地下鉄を上げています。つまり浸水リスクが高い東京に、浸水リスクの少ない国で発案された地下鉄を持ち込むのはどうなのか?ということなんでしょうが、逆に言えば東京に地下鉄を作らなかったことによるマイナスや災害の確率などを勘案するとなかなか微妙な問題ですね。それと鈴木宗男さんがBlog(ムネオ日記・平成26年8月22日)で「昨日も触れたが、10年に一度位の割合で土砂崩れが起きている場所にどうして行政側は建築許可を出したのだろうか。私はふと疑問に思う。」と書いてあります。私も同様な疑問を持ちますが、それでは何年災害が起きなかったところならいいのでしょうか?それを突き詰めれば、この災害列島日本に住むところは無くなってしまいます。国や地域だけで無く人もそうですが、山高ければ谷もまた深し。日本のように四季がはっきりしていて風光明媚で作物の生産に適している地域。反面、こういった地域は災害と隣り合わせとも言えるのでしょうね。
【資料集】
■ 国土交通省中国地方整備局太田川河川事務所のサイトより
# 14/08/26: 国土交通省にこんな頁があるんだぁ、と思って見ていましたが、最近の広島県の災害を考えると、昔からこの地域は災害地域なので注意喚起していたんですねぇ、と思います。
# 「タキ」地名: 昔から「滝に住む竜(土石流)が出る」と伝えられる。タキとは崖を意味する。タキがタケ(竹)、タカ(高、鷹たか)になっているところもある。
# 「ヒラ」地名: 昔は「ピラ」と発音されて「平」の字が当てられていた。「平野」などがそうで、平らなところと思いがちですがそうではありません。ある地点が崩壊をおこす意味で使われます。
# 「スキ」地名: 「杉」の字を当てたところが多い。剥(す)きからきていて鋤(すき)に通じています。助、菅(すが、すげ)、繁(しげ)のほか、「スキ」が「月」、「附(ふ)」に変化した地名もある。「スカ」と「スガ」は流水が岸に衝突して川崖になるところのこと。
# 「ホキ」地名: 「崖」を意味する古語で、川では流水の衝突する川崖に多く名付けられていた、「ホケ」、「ボケ」、「フキ」、「フケ」などと転訛(てんか)している地名が多い。「ハケ」、「ハカ」なども同類。
# 「カキ」地名: 柿の木の地名が多く、昔、柿の大木があったとするのは民話、伝説です。「カキ」は「欠(け)」で、地崩するところのこと。カケ(掛かかり)、カゲ(影かげ)もその疑うたがいがあります。地形的に欠ける要素がなく柿の産地を表している場合は近年つけられた地名。
# 「アワ」地名: 「粟」や「阿波」あわなどは、古くは「アバ」と発音されていました。崩壊地名で土地が暴(あば)ける所という意味。阿波国(徳島)も土地がアベける災害の国と解することができます。
| 現象等 | 地名 | 同義語 | 転訛 |
| 崩壊 | ホケ | ボケ、ホキ、ハケ、ハゲ、ハカ、ハガ、バーガ、ハキ、フキ | 保木、法花、墓、歩危、波介 |
| ズレル | ザレル、サレル、サレ、サル、サラ | 猿、去、佐礼 | |
| 崩れる | クエル | クイ、クエ | 越、喰、久種、崩、久栄 |
| 潰れる | ツエル | ツエ、クエ | 杖、津江、潰溜 |
| 埋められる | ウメ | 埋、梅 | |
| 砂礫の多い所 | イシイ | 石井 | |
| 谷川が流送した土砂 | サコ | 砂子、砂古、佐古 | |
| たぎる | タキ | ダキ、タケ、ダケ、タギ | 急瀬、滝、岳、竹 |
■ イメージ地名に注意。
「地名は災害を警告する 由来を知りわが身を守る 遠藤宏之 技術評論社」では「イメージ地名に注意」として、「イメージ地名」という用語を使っている。この用語は初見なので、私も今後この用語を使わせて頂くとしましょう。
イメージ地名とは、最近になって開発された地域で、いわゆる今風の地名をつけた所を指し、その代表例が「〜丘」という地名(住所)である。
この本によると、東日本大震災で地滑り被害がでた地域として、
仙台市: 緑ヶ丘、松が丘、若葉町、双葉ヶ丘、桜ヶ丘、旭が丘、南光台。
白石市: 緑ヶ丘、松ヶ丘。
福島市: あさひ台、桜台。
などがあげられ、すべて、イメージ地名としている。
また、東日本大震災で液状化した所の多くはイメージ地名だったそうです。もっとも、液状化で有名になった浦安市。この浦安という地名はイメージ地名ではありませんが、市内の液状化した場所は、千葉県浦安市日の出、船橋市日の出、潮来市日の出などのいわゆる縁起が良い今風の地名だそうです。
■ 傾斜地の土地開発では、必ず削れた所と埋めた所がでる。
一般に、削られた所は強いが、埋めた所は弱い。ただ、傾斜地で段々に土地開発を行った所では、埋めた所の土砂崩れで、削られた所が被害に合うことがある。そして、一番の問題は、削った所と埋めた所、素人には判断できないとのこと。
■ 東日本大震災の液状化の主な場所
・ 東京湾岸の埋め立て地帯。
・ 利根川の流域。
・ 荒川の下流域。
・ 多摩川の流域は液状化はないみたいだね。
東北地方太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明報告書 より
■ 江戸幕府は江戸の町に隅田川の水が流れ込まないように「隅田堤」と「日本堤」の二つの「堤防」を作った。この日本堤の先にあるのが吉原の遊郭で、吉原に行く人が日本堤を歩くことによって地面を踏み固める効果をねらった。(こういうの智恵、好きだなぁ)
■ 地名と災害の関係を統計分析 静岡大の岩崎研究室
・ 研究によると、水害の危険性が高いのは「吉」「江」などを含む地名、土砂災害は「倉」「内」を含む地名。それに対して、「栄」「台」などを含む地名は災害リスクが比較的低い。「島」は水害リスクが高く、「林」は斜面崩壊リスクが高い。
【静岡新聞】 http://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/bosai/360122.html
■ 災害にまつわる地名伝説等のあるところ【地名は警告する 日本の災害と地名 谷川健一】より
■ 岩手・宮城内陸地震の体験談【地名は警告する 日本の災害と地名 谷川健一】より
■ 地崩れの生物地名【日本おもしろ地名考 服部真六 文芸社】より
■ 東京の危険な低地地名【地名は警告する 日本の災害と地名 谷川健一】より
■ 東京都の災害危険地域
・ 海抜0m地域が多い都道府県: 愛知県(370平方Km)、佐賀県(207)、新潟県(183)、東京都(124)。
■ 津波伝承【 災害・崩壊・津波 地名解 太宰幸子著 彩流社】より
■ 地名用語集
■ 古語の意味
【参考資料】
・ あぶない地名 災害地名ハンドブック 小川豊 三一書房
・ この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う 楠原佑介著 幻冬舎新書
・ 災害伝承 命を守る地域の知恵 高橋和雄著 古今書院
・ 災害・崩壊・津波 地名解 太宰幸子著 彩流社
・ 地名に隠された「南海津波」 谷川 彰英 講談社プラスアルファ新書
・ 地名は警告する 日本の災害と地名 谷川健一 冨山房インターナショナル
・ 地名は災害を警告する 由来を知りわが身を守る 遠藤宏之 技術評論社
・ 地名由来 飛騨・美濃 山内和幸 まつお出版
・ 地名の楽しみ 今尾恵介
・ 外部資料リンク集