新しい開墾地名
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「あらい」について考える

 埼玉県から群馬県の県境付近には「あらい」という名字が多く見られる。その代表は「新井」で、名字の書籍をみると大体は「新しく開けた水飲み場(水源)」と解釈されており、それに対して、「荒井」は「古い水飲み場(水源)」と書いてあることが多い。

 しかし、はたしてそうなのだろうか?

 古代より、あたらしく開かれた地名としていろいろな表現(表記)がなされてきたが、その代表的なものに「○○新田」というのがある。この「○○」には「開発者の名字」や「本村の名前」などが入り、身近なところでは以下のようなものがある。

・ 清助新田(せいすけしんでん): 山形県寒河江市清助新田。左沢線の羽前高松駅の西側。開発者の佐藤清助に由来する。
・ 藤助新田(とうすけしんでん): 山形県東根市藤助新田。(河北町の)谷地城主であった白鳥十郎の家老の真木藤助が江戸時代初期に開いた。河北町民ゴルフ場の東側一帯。

 この「新田地名」だが、これは江戸時代に開拓された土地につけられた地名のことが多く、江戸時代には農機具の発達や農業(土木)技術の発達で新しい土地の開発が可能となったことに由来する。

 それに対して古代にはどういった表現をしたかと言うと、「はり(治)」が代表的で、「今治(いまばり)」とか「新治(にいはり)」という地名が見られる。

 その他にはと言うと、「あらく」という表現がある。「あらく」とは、 新しく開墾された畑を指し、関東地方では、荒れ地を開いて畠にすることを、「アラク起こし」という。これを、名古屋では「アラコ(荒子)」というそうで、「荒子」と言えば、前田利家の出身地の愛知県名古屋市の「荒子」が有名である。

 さて、本題の「あらい」に戻るが、私見ではあるがこの場合も「あらく」から転じた表現ではないかなぁ、という気がする。そこで、「あらい」地名の由来をピックアップしてみよう。

・ 新井(あらい): 埼玉県久喜市新井。地名の由来は不詳だが、新たな開発集落を意味すると言われる。
・ 新井村(あらいむら): 埼玉県北本市荒井。地名は「イ」には井・堰・居などの意味があり、広くは開墾集落を意味すると思われる。【出典
・ 荒井(あらい): 宮城県仙台市若林区荒井。地名は新居の意で新田集落に由来する。
・ 荒井(あらい): 福島県本宮市荒井。地名は新居の意味と思われる。【出典
・ 荒井(あらい): 栃木県大田原市荒井。地名は新井を意味し、井泉の湧く所があり、新たに開けた土地であることから命名された。明応3年武蔵国から当地に来た大田原氏が最初に居館を構えた土地であると伝える。【出典

 もちろん、「水源に由来する」と言われる地名もある。しかし、元々は「あらく」という表現があり、そこに人々が住み着いて「あらい」という地名ができた。元々は「荒居」と書いたのかもしれないですねぇ。しかし、日本には「好字」という文化があり、「荒」を「新」に変えて、「新居」や「新井」という地名ができたのではないだろうか。
「荒」を「好字」に変えた代表例として以下の地名がある。

・ 荒城郡(あらきぐん): 飛騨国の郡名。郡名は新開地の意であるという。鎌倉期以来、吉城(よしき)郡とも呼称し、江戸期には吉城郡に統一された。【出典

「井」というと、どうしても井戸や水源というイメージに惑わされやすいが、もちろん全てではないが、人々が居住した「居」から転じたケースもあるかも?ということは念頭におく必要があるだろう。

# 参考: あらきだ ・ 今堀

# なお「萩(はぎ)」も新しい開墾地名という説もあるようです

# 江戸時代に開墾されて耕地が増えた実例: 武蔵国の土呂村

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