「沢」と「谷」について考える
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■ 131224: 「沢」と「谷」について考える

・ 「沢(さわ)」は縄文時代以来の言葉(いわゆる縄文語)で「谷(だに)」は弥生時代に大陸から持ち込まれた言葉(いわゆる弥生語)と言われる。

・ 従って、東日本には「沢」のつく地名が多いのに対して、西日本には「谷」がつく地名が多いと言われる。となれば、東日本の名字には「沢」のつくものが多く、西日本の名字には「谷」がつく名字が多いとも言える。

 しかし、なんにでも例外はあるものだ。

 例えば、山形県のさくらんぼテレビに「丹後谷(たんごや)愛」というアナウンサーがいたが、「谷」がつくからと言って西日本の名字かというとそうでは無く、また丹後谷さんの出身は秋田県秋田市である。秋田市の名字の特徴の一つとして、語尾に「谷」がつく名字が多いことがあげられる。これはいわゆる地形の「谷」ではなく、屋号の「屋」から転じたものといわれ、昔の北前船で栄えた秋田の名残と言われる。つまり、かつては「越後屋」のような屋号であった「丹後屋」から「丹後谷」に変化したものですね。

・ 話は戻りますが、東日本には「沢」のつく地名が多い。山形県内を見渡しても、「山形市成沢(なりさわ)」「西川町大井沢(おおいさわ)」「鶴岡市荒沢(あらさわ)ダム」「尾花沢(おばなざわ)」「山形市宝沢(ほうざわ)」のように「沢」がつく地名は思い浮かぶが、「谷」のつく地名はなかなか思い浮かばない。ただ例外的に思い浮かぶのが、「河北町谷地(やち)」「山辺町作谷沢(さくやざわ)」「寒河江市(さがえし)谷沢(やざわ)」であるが、「谷地」はいわゆる「たに」とは関係無く、「やち」という読みが語源で、「湿地帯」を表す。また、「作谷沢」も「谷沢」も語尾は「沢」である。

さて、「沢」のつく地名の由来はなんだろう?

(1) 成沢: たぶん、「鳴沢」から転じた言葉で、「ごうごう」と鳴る沢の音に由来するのだろう。
※ 余談ですが、東日本では「成沢(鳴沢)」と表現する言葉、西日本では「谷」をつけた表現がありそうだが、いまだに見つからず。どなたか御存知の方はおられますか?

(2) 大井沢: 「井」は井戸を思い浮かべがちだが、広義としては「水源」を表し、「水量の多い沢の水源」を意味するんでしょう。

(3) 荒沢: 「荒」は枯れたという意味があり、水量が減った沢を意味したのかな?

(4) 尾花沢: 「おばな」の由来はアイヌ語起源を含めていくつかあるが、詳細はこちら

(5) 宝沢: 馬見ヶ崎川流域は鉱物の宝庫で、砂鉄もとれ採掘によって川が濁り、それからできた小白川や白川の名は今も残っている。砂鉄の採掘は大正時代まで続き、銅町の鋳物産業の要因となった。

・ 「谷」は弥生語で西日本を中心に広がったが、後には東日本にも広がり、新しくついた地名には「谷」のつく地名も多い。例えば、東京都内を見渡しただけでも、「渋谷」「四谷」「市ヶ谷」「松が谷」「阿佐谷」「下谷」「世田谷」「日比谷」「雑司が谷」「碑文谷」「鶯谷」などなど、東京には「谷間」が多いのに驚く。

ところで、この中で「鶯谷」だけが「あぶらしっこ」。「あぶらしっこ」は、今は使わないだろうが、山形で「仲間はずれ」のことを意味します。

Q どうして、「鶯谷」はあぶらしっこなんでしょう?名字と地名を考えると下手なサスペンス小説を読むよりも面白い。
A 「鶯谷」だげ「たに」読みで、その他はすべて「や」よみですね。一般的に、地名の読み方は西日本では「たに」読みで、東日本では「や」読みだそうです。

■ 東日本の「沢」を、西日本では「谷」という。富山県には「谷」の地名が多く、長野県には「沢」の地名が多い。つまり、北アルプスが東日本地名と西日本地名との境界とも言える。【出典

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