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■ 地名はどのように決まるのか 国連による「地名の標準化」と日本の課題 春山成子・田邊裕 編 古今書院
# 日本の地名研究は、地名が表す地形・位置やその発生・由来など、主に柳田國男の民俗学的視点から行われ、研究発表も地名の国際的政治地理学的観点は少なかった。国際的には名称科学国際評議会が、人名や地名の固有名詞研究を行っていたが、日本からは国語学関係のわずかな研究者が参加しているに過ぎなかった。
# 地名標準化の利点
・ 現代社会は、正確で効率的な行政やコミュニケーションのために、標準的な地理的名称の使用に依存している。全国的な標準化計画は、政府、産業、商業、教育のあらゆる水準における業務効率を高めることによって、時間と費用の節約をもたらす。とくに、地図や海図の作成や、国勢調査や国防、国内および国際的な陸・海・空の通信や水や鉱物の調査、郵便や海運の配達、土地や水の安全、災害対策、人口統計、文化、社会、科学研究に有用である。
・ 地理的名称の標準化は国によって異なる。実際、効率的な方法を持つ2つの国が同じ方法で標準化に取り組むことはみられず、その組織、原則、政策、手続きは国によって異なる。その良し悪しではなく、それぞれの国が、全国的に受け入れられ、一部を除き、現地の話し言葉や書き言葉の用法と一致する。一貫した書き言葉の名称を確立するという目標の達成が、国連の考え方である。
# 名前の変換: 転写と音訳
・ 名称の変換とは、ある言語または文字(言語または付与側の言語・文字)に変換するプロセスのこと。これは、一方の言語の文字の音の書かれた形を、他の言語の文字で表そうとするものである。名称の変換は主に、転写や音訳という二つの異なる方法によって達成される。
ローマ字は、国連によって国際的に使用されるベースとして採用されており、専門家グループはローマ字以外の各文字に単一のローマ文字表記(音訳)システムを開発することをことを強く推奨している。
# 地名の命名について: 国連による勧告
・ 1967年の第一回UNCSGNの決議
� ”塢�要な名称の変更は避けること。
�◆|詫�的名称の綴りは、方言に配慮しつつ、できる限りその国の現在の正書法に従う。
�� 名称の体系的な扱いは、重要な要素を抑制するようなものであってはならない。
�ぁ,い�つかの名称が、さまざまな形または文法的な形で存在する場合、国名当局は、それらの形の一つを公式の標準名称とすることを検討するべきである。
�ァ…蟯Щ譴�地名に含まれる可能性のあるすべての言語において、地名管理当局は、定冠詞を含む名称を決定し、それに応じて標準化すべきだ。
�Α,垢戮討旅颪�、地理的名称における元素の略称の使用基準を設定する。
�А(9臾松里琉靴ぁ蔑磧Д魯ぅ侫鵑鮖藩僂垢襪�、名称の途中に大文字をしようするか)については、各国でシステムを考案する。
# 南極の地名
・ 人類が南極大陸を発見したのは1820年頃。1895年の第6回国際地理学会で、南極の地理的探検の重要性が国際的に再認識され、19世紀末から1917年までの「南極大陸の英雄時代」につながっていった。新たに足を踏み入れた未知の土地での人間活動には、必ず地名が必要になる。そのため、初期の南極探検隊は、母国の王室や君主、政治家、探検家、科学者、探検を支援した人物などの氏名、探検に使用された船の名前などをもとに名付けされた。
・ 日本の南極地名付与の規定において、1961年の制定当初から一貫していた方針は、日本が新たに命名対象とした地形などについては、「すでに外国によって命名され、かつ国際的に発表したものを除いく」という点だった。日本の南極観測地域にノルウェー語の地名が多いのは、すでにノルウェーによって命名されていたからである。
# 海底地形名の命名・統一に関する国内外の取り組み
・ 世界で初めて海底の地形に命名されたのは、19世紀末のタスカロラ海溝(現在の千島・カムチャツカ海溝および日本海溝)で、発見した船の名前をとったもの。この時代は太平洋や大西洋を横断する海底電線の敷設のための海底調査が始まって、海底地形の様子が明らかになり始めた。海底の探検や調査が本格化してくるうちに、同一の地形に複数の名付けがなされたり、名付けの原則が不統一であったりして混乱が生じた。
・ 海底地形名の統一に向けた本格的な取り組みが行われたのは、現在、世界で唯一の公的世界海底地形図作製事業である大洋水深総図(GEBCO)事業である。
・ 地名統一に向けた国内の取り組み
日本周辺の海底地形への命名は、漁師たちが沿岸近くの好漁場となる浅瀬に目印として命名し、慣習化したのが最初。日本で公的に命名されたのは大正13年(1924年)の大和堆が最初である。以後は、音響測探技術の発達や海洋測量の進展につれて、海底地形名の統一を図る必要性が高まった。
# 海底地形名の命名の原則
海底地形名は、固有名と属名(海底地形用語)から構成され、伊豆・小笠原海溝を例にすれば、伊豆・小笠原が固有名で、海溝が属名である。
固有名の原則
� |論�と関連する名称が第一優先である(地理的名称)
�◆ヽつ戝老舛糧�見や確定に関係した船や調査研究機関名も付与できる。
�� 人名も付与できるが、原則故人に限り、生存者の場合には海洋科学に顕著な、または重要な貢献をした人に限られる。
�ぁ〇�通った地形の集まりに対して、歴史上の人物、神話の事象、星、星座、魚、鳥、動物などの名称を付与できる(集合的名称)
�ァ,箸�に顕著な特徴を有する地形に対して地形の記述的な名称も付与できる(連想・記述的名称)
# 属名を新たに付与する場合には、「海底地形名標準」に記載された属名定義リストから選択すること。
# 【参考】属名定義リスト例
・ 海嶺(RIDGE): 長く伸びた高まりの地形で、その複雑さや大きさ、勾配は様々である。
・ 海溝(TRENCH): 比較的急峻な斜面を有する長く深い非対称断面を示す凹地で、プレートの沈み込みと関係を有する。
# 日本の内海・内湾、領海内などで承認された海底地形名例
・ 手石海丘: 相模湾の以東沖
・ 松前海台: 北海道の西方
・ 須田海釜: 津軽海峡
# 国際的に承認された海底地形名例
・ 日本海溝: 本州の東方。太平洋プレートの沈み込み口。
・ 大和堆: 日本海。海軍の測量艦の「大和」が発見した。